03Interview

人生最大の苦境をチャンスに変えて誕生した、唐津発の民間の化粧品輸入代行法人。ニッチ産業の可能性にかけた思い―株式会社ブルーム

もとは明治30年創業の老舗料亭の4代目だった株式会社ブルームの代表取締役社長の山﨑信二さん。まずは、会社の概要、それから現在の会社がどのようにして誕生したのか、その道のりを教えて下さい。

当社は、平成3年10月創立し、これまで主に輸入する化粧品関係の検査を行い、日本のマーケットに届けるお手伝いをしてきました。経営の基本理念は、「品質保証を確実に行い、消費者のもとに安心安全なものを届ける」ということです。

私はもともとは老舗料亭「あかみず」の4代目で、現在の会社とは全く違う家業をしている家に生まれました。生まれた時から「あかみず」の4代目として、期待され育てられてきましたが、どうしても親に敷かれたレールに乗っただけの人生に納得がいかなかった。

それで、料亭の経営に携わる傍ら様々な事業に挑戦してきました。1990年代は、アパレルや宝飾を輸入して、量販店に卸ろす事業をしていました。香港にオフィスがあり、そこから仕入れて日本のマーケットに卸ろす事業をしていたのですが、徐々に競争が激化していく中で、ポテンシャルもありライバルも少ない、ニッチ産業であった医薬品等の輸入マーケットに参入しました。

医薬品等の輸入を手掛けたビジネスは当初とても順調でしたが、当時の薬事法に違反をしていたことで、罰金刑を受けてしまいます。その時はとても悔しい思いをして、留置所で「絶対このままでは終わらないぞ、何とか這い上がろう」という気持ちが湧きあがり、それを機に薬事法(現在の薬機法)を猛勉強しました。すると日本には当時、化粧品の民間の検査機関がなく、一方でマーケットの可能性、ビジネスチャンスがあることが見えてきました。参入障壁が高いビジネスモデルでしたが、逆に参入障壁を乗り越えれば、成功する可能性が高いと思ったのです。

現在は随分と規制緩和が進みましたが、当時日本の化粧品の輸入は、医療品と同じ扱いで大変厳しい検査基準が課せられていました。一方で、それを検査できる機関は国の外郭団体のみで民間企業は存在しない。そこに目をつけたのですが、当初ビジネスアイデアを聞いた関係者からは「無理に決まっている」と一蹴される中、先進国のアメリカへの視察を通して、今後それらの分野を民間が担っていく時代の流れが必ず来ると確信し、根気強く一つ一つライセンスを取っていき、ついに平成16年1月に厚生労働省発薬食の指定試験検査機関として認定され、輸入化粧品を検査できる民間企業の先駆けとなりました。

貴社のサービスを利用されるお客様はどのような方なのでしょうか。

8割が外資系法人ですね。海外の大手メーカー、ブランドなどの化粧品類を日本に輸入するときの検査機関として当社のサービスをご利用頂いています。大手の化粧品会社も検査施設はありますが、基本的に自社製品しか検査できず「私文書」扱いとなります。一方で、当社は第三者機関と位置付けられ、検査結果の文書は「公文書」となるため、トラブルが生じた際にも、裁判で安心安全を保障した証拠資料として力を発揮できます。そうした信頼を地道に獲得して、現在は多くの海外法人の皆様から信頼を頂いています。ここ20年間は投資と勉強に費やしてきましたが、それが今に繋がっていると思いますね。

今後の貴社のビジネスの展望をお聞かせください。

日本の化粧品や農産品を海外へ輸出するサポートをしていくため、2022年4月から新規事業である輸出部門を立ち上げました。これまで海外から日本に輸入するときに必要な化粧品や農産物の検査で培ってきた当社の技術と実績をベースに、次は日本の商品を海外に輸出していくのに必要な検査を担い、日本の商品を世界に届けたいと思っています。特に農産品は鮮度を保つため、検査のスピードが必要ですが、日本の現状の検査機関だと時間がかかりすぎている課題があります。世界最新の技術でグローバルマーケットに通用する規格で検査を進めていくため、国際規格ISO17025を取りました。これから人口減少する日本のマーケットはどんどん縮小していきますので、マーケットを国外に展開し外貨を稼ぐことが必要です。日本の農産物や化粧品の海外市場への販促をサポートするこの取り組みが唐津、佐賀、九州を良くし、ひいては「日本を良くする」ことに繋がればと考えています。

御社のビジネスを成長させるうえで大切にされていることは何ですか。

検査の全ての工程をオールインワンで当社で担うようにできることです。そうすることで確実に品質保証もできますし、お客様にとってはコストカットに繋がります。また、海外法人は環境保全やSDGsへの意識が高いので、企業活動をする中で、美しい唐津の自然を壊さないように環境保全と最先端技術の両立を常に心がけています。

それから、雇用環境の整備にも努めています。当社は上場企業並みに福利厚生を充実させ、休日もしっかり確保しています。当社の従業員は70%が女性で管理職も女性が多いのですが、産後の復職の際に待機児童の問題がありました。そこで、老舗料亭だった「あかみず」の跡地に「あかみず保育園」を建設し、従業員が安心して働ける環境を整えました。そのおかげで産休、育休後に、ほとんどの従業員が復帰できるようになりました。毎年、唐津商業高校から新入社員として1~2名採用しているのですが、採用担当の先生から「一番人気はブルームさんだ」と聞きました。私達の雇用環境が若い人からも評価されていて嬉しいですね。

唐津への想いや貴社が取り組むCSRの活動を教えて下さい。

海外法人の方を唐津に案内すると、よく「唐津は自然が美しい」「海外の観光地より唐津が素晴らしい」「環境的に深さがある」と仰って頂きます。唐津の方にとっては当たり前のことが、外からの方にとって唐津の環境は特別に感じるようです。そういうことをもっと唐津の人が自覚をして、発信していくことが大事だと思います。当社もその一助になればと思って唐津を発信しています。

シアター・エンヤへの応援メッセージをお願いします!

ネット配信やDVDと比べ、やはり映画館のスクリーンで観ると感動が違います。何より一度無くなった映画館を新しい文化として復活させたことでまちに深みが出ました。シアター・エンヤやKARAEは新しい施設ですが、だからこそ唐津の伝統や古いものの良さをうまく引き出してくれているように思います。長い目で見るとまちの人達のためにも観光誘客のためにも、必ず映画館は役に立つと思います。これからも、出来る限り応援させて頂きます。

株式会社ブルーム

創立:平成3年10月
資本金 :1億円
本社: 〒849-5131 佐賀県唐津市浜玉町浜崎1901ー457
従業員数: 33名 令和4年1月1日時点
公式WEBサイト:https://www.bloom-jp.com/company

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